大島真寿美『香港の甘い豆腐』

■『香港の甘い豆腐』(大島真寿美理論社、2004年10月)読了。
 そのタイトルでおもわず手に取った1冊。いやあ、香港好きは思わずおっと言ってしまううまい書名だ。
 17歳の日本人の女の子が、ある夏突然香港という見知らぬ街で暮らすことになる。
 まったく予備知識もなく訪れた異国の街に対する驚きが素直な視点で語られる。
 主人公の少女はこの街が好きになっていくのだが、香港を呼吸するように愛する感覚、あるいは「はまり方」は、すごくうなずけて楽しい。一見派手だがそれが本人に実にしっくりくるおばさんとか、モデルがいるに違いないと思うほど人物もリアル。
 次に香港を訪れる時は、李麗珊も鍛えられたという長洲島で黄油蟹でも食ってみよう。
 ところで、終わり近くになって「四角い桃」というのが出てくる。これは知らなかった。どうも「蟠桃」のことらしい。あの孫悟空も盗み食いしたというあれである。香港にこれだけ足繁く通ってまだ食べたことがない。これも次回の課題としよう。